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東京地方裁判所 平成9年(ワ)28117号 判決

原告 湊惠子

右訴訟代理人弁護士 鈴木圭一郎

同 鈴木和雄

被告 株式会社セザール

右代表者代表取締役 猪俣展收

右訴訟代理人弁護士 田村護

主文

一  被告は原告に対し、金五三八万八四三三円及びこれに対する平成一二年一月一日から支払済みまで年六パーセントの割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを四分し、その三を原告の、その余を被告の各負担とする。

四  この判決は、第一項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告は原告に対し、金二七九〇万二五一七円及びこれに対する平成一二年一月一日から支払済みまで年六パーセントの割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、被告が近くの銭湯の煙突からの煙害の及ぶ分譲マンションを誤った説明をして原告に売り渡したことにより債務不履行もしくは不法行為責任及び瑕疵担保責任を負うと原告が主張して、これによる損害賠償を請求した事案である。

一  争いのない事実等

1  被告は、分譲マンションの開発、賃貸、不動産の売買、仲介等を目的とする株式会社である。

2  原告は、平成八年七月四日、被告との間で、別紙物件目録(一)記載のマンション(以下「本件建物」という。)及び同目録記載の土地(以下「本件土地」という。)を売買代金四九八〇万三〇〇〇万円で、同目録(二)記載の車庫(以下「本件車庫」という。)を代金四〇四万八〇〇〇円で買い受ける旨の売買契約を締結した。

3  原告は、平成九年六月三〇日までに約定の売買代金を支払い、右同日、本件建物及び本件車庫の引渡を受け、同年七月一〇日、本件建物に入居したが、本件建物の南西方向約七メートルの位置に月島温泉という銭湯の大煙突があり、同煙突から煙が排出される状態が続いていた。

4  月島温泉は、平成一一年一〇月末に営業を停止し、煙突からの煙は排出されなくなった(乙五、六の1、証人森淳)。

二  争点

1  誤った説明により煙の及ぶ本件建物を売り渡したことによる被告の債務不履行もしくは不法行為責任及び瑕疵担保責任の有無

2  原告の被った損害の有無及び範囲

三  争点に関する当事者の主張

1  争点1(被告の責任)について

(一) 原告

(1)  原告が本件建物に入居した時点で、本件建物は、月島温泉の大煙突から排出される煙のため、窓も明けられず、昼も夜もベランダに出られず、洗濯物も干せず、鉢植えも置けない状態で、住居として使用できない状況であった

(2)  被告は、本件建物を原告に分譲・販売するにあたり、右のような煙害の及ぶおそれのあることを何ら説明せず、むしろ、本件建物の完成時には月島温泉の営業は停止し、煙突は撤去されているかのように説明した。そして、パンフレットで「明るく、そして快適なライフステージをお届けいたします。」等と説明して勧誘し、不完全なマンションである本件建物を原告に販売したものである。このことは、本件建物の現在もしくは将来の環境について著しく事実に相違する表示をしたものとして宅地建物取引業法三二条に違反するものである。また、重要な事項について故意に事実を告げず、または不実のことを告げる行為として同法四七条一号にも違反する。被告の右のような行為は、原告に対する関係で債務不履行もしくは不法行為にあたり、被告はこれによって原告の被った損害を賠償する義務を負うとともに、隠れた瑕疵のある本件建物を販売したことによる瑕疵担保責任も負う。

(二) 被告

(1)  原告の主張(1) を争う。

月島温泉の煙突から出る煙の程度は時間帯によって異なり、また、本件建物に煙が及ぶのは一定の風向きの時に限られていたから、生活に支障をきたすほどの煙が本件建物に及んでいたわけではない。

(2)  原告の主張(2) を争う。

被告は、本件建物の売買契約締結にあたり、重要事項説明書でも月島温泉の跡に建てられる建物の着工時期は未定と明記しており、原告に対し、本件建物の完成時に月島温泉の煙が止まっているかのように説明したことはない。また、原告は、本件建物のあるマンションが建築される現場を見て、月島温泉の煙突が存在することを知りながら本件建物を購入したものであるから、被告が原告主張のような責任を負うことはない。

2  争点2(原告の損害)について

(一) 原告

(1)  原告は、本件建物に入居後、煙害のために喘息にかかり、その煙害に耐えられず、平成九年八月九日に本件建物を離れ、もともと賃借・居住していた東京都港区芝浦の芝浦マンションに居住したうえ、煙害の止まった後である平成一二年四月八日に本件建物に再入居したが、このために次のような損害を被った。

<1>引越費用

本件建物~芝浦マンション(平成九年八月九日) 二五万三六四〇円(ヤマト運輸)

四一四〇円(タクシー代)

芝浦マンション~本件建物(平成一二年四月八日) 二六万〇一〇〇円

(小計五一万七八八〇円)

<2>家賃及び車庫代

芝浦マンション 平成九年八月分~平成一一年一二月分 六三八万七五九八円(二二万〇二六二円×二九か月)

車庫代 平成九年八月分~平成一〇年三月分 五〇万九二五三円(五万二四一九円【八月分日割り】+六万五二六二円×七か月)

(小計六八九万六八五一円)

<3>エアコン代

芝浦マンションに戻ったことによるエアコン代 三一万二九五〇円

<4>移転通知費 一万一三〇〇円

<5>喘息の治療費(山田医院、都立済生会中央病院、芝救急時の治療費、薬剤費、病院最寄り駅からのタクシー代) 二二万二六三六円(平成九年八月~平成一一年九月)

<6>慰謝料(喘息被害等による精神的苦痛に対する慰謝料) 二〇〇万円

<7>弁護士費用 三〇〇万円

(2)  本件建物には前記のような煙害が及ぶという瑕疵があったため、原告は被告に対し、販売価格四九八〇万三〇〇〇円の三割に当たる一四九四万〇九〇〇円の減額請求をし、同額の支払いを求める。

(3)  よって、原告は被告に対し、以上の合計額二七九〇万二五一七円及びこれに対する平成一二年一月一日から支払済みまで商事法定利率年六パーセントの割合による遅延損害金の支払いを求める。

(二) 被告

原告の主張を争う。原告主張の損害については、いずれも被告に賠償義務のあるものではない。

第三争点についての判断

一  争点1(被告の責任)について

1  証拠(甲五の1、2、七の1ないし3、八ないし一二、一三の1ないし5、一四の1ないし11、三〇の1ないし6、三一の1ないし5、三五、三六、三七、三九、四〇の1ないし8、四一、四二、乙一ないし五、七の1ないし45、証人梅崎寿雄、同永井充、同森淳、原告本人)によれば、次の事実が認められる。

(一) 原告は、新聞の折り込み広告を見て、平成八年六月三〇日頃、本件建物を含むセザール第二月島の建設予定地を訪れ、更地の状態の敷地を見分した。その際、被告担当者は原告にセザール第二月島のパンフレットを交付したが、同パンフレットには「水と緑が織りなす美しい景観。都心の利便性を享受する軽快ポジション。」「全戸に陽光を誘う南東、南西向きのフォルム。明るく、そして快適なライフステージをお届けいたします。」などと記載されていた。

(二) 原告は、セザール第二月島の中でもっとも住環境が良く値段の高い最上階(九階)の南東角の本件建物を購入することとし、同年七月四日に売買契約を締結することとなった。

(三) 同年七月四日に被告の担当者が原告を勤務先に訪ね、本件建物の売買契約締結の手続を行ったが、その際、被告の担当者が読み上げたうえ原告に交付した「重要事項説明書」には「本物件南東側隣接地(現況四階建て共同ビル、公衆浴場他)に建築基準法その他法令及びこれらに基づく関係諸官庁の指導、監督に従った高層建物が建築予定(九階建共同ビル、店舗及び住宅、着工時未定)であることを容認して頂きます。」と記載されていたものの、当時、被告担当者らはセザール第二月島が竣工する頃には月島温泉の営業は停止してその跡に新しい建物の建築がなされるものと考えており、原告に対しても、本件建物が完成する頃には月島温泉の煙突は取り壊され、九階建ての新しいビルが建築されるとの説明を行った。このため、原告の側でも、月島温泉の煙突から排出される煙については何らの問題もないものと理解し、むしろ、月島温泉の跡に建てられる予定の九階建て建物の目隠し等について質問しただけであった。

(四) 被告は、セザール第二月島の建築計画を立てるにあたり、主として月島温泉の敷地所有者ら近隣の地権者と接触して、月島温泉の建て替えを含む再開発計画のあることを聞かされていた。しかし、その後、月島温泉の経営者と敷地所有者の間で紛争を生じ、地主側で調停を申し立てたものの不調となって平成八年九月には同調停を取り下げたことから、同再開発計画は一時中断し、月島温泉の営業停止の時期の見通しが立たない状態となった。したがって、被告が原告に本件建物を分譲販売した平成八年七月四日頃の時点で月島温泉の経営者や敷地所有者らに問い合わせるなどすれば、月島温泉の営業停止の時期のめどが立っていないことが容易に判明したはずであるが、被告はこのような問い合わせを行わなかったため、右(三)のような認識をしており、原告に対しても右のような説明をしたものである。

(五) 原告と被告の間で本件建物の売買契約が成立し、その後、セザール第二月島の建設工事が行われている間も、月島温泉の営業が続けられて煙突から煙が出ている状態が続いていることは工事現場から一見して明らかであったが、被告担当者らは、月島温泉の営業停止の見込み時期等についての情報を収集したりこれらの情報を原告らに提供することもないまま、平成九年六月にセザール第二月島の完成と入居開始を迎える事態となった

(六) 原告は、平成九年六月三〇日に本件建物の引渡を受け、同年七月一〇日に入居したが、月島温泉の営業が続けられており、煙突の先端(排出口)が本件建物とほぼ同じ高さにあって本件建物から見て南西約七メートルの煙突口から煙が出る様子を見て衝撃を受けた。

(七) 原告の入居当時、月島温泉では、原則として平日は午前一〇時半頃から一二時頃までと午後四時頃から夜まで釜焚きを行っていた。燃料は平日にはマレーシア産の木の製材の残りの新しい木を使用しており、廃材の場合のように塗料、塩化ビニールなどの化学成分が含まれていることはなかった。煙の状況は、午前一〇時半ころの着火時に釜の温度が上がるまでの約一〇分余の間は濃灰色の相当の量の煙が出た後、しばらくは陽炎状態で目に見える煙はほとんどない状態となるが、新たに木を加えるとまた約一〇分余りさほど多くない量の濃灰色の煙が出た後再び陽炎状態となるという状態が繰り返された。土曜日の夜と日曜日及び祭日には、従業員の休息のため自動車のモーターオイルの廃油を燃やしていたが、この煙には重油の煙よりは少ないものの一定の硫黄酸化物等が含まれていた。この場合の煙の状況は約一〇秒間の濃灰色の煙が出る状態の次に約五分間の陽炎状態及び約六分間の白色の煙が出る状態が続き、再び約一〇秒間の濃灰色の煙から始まる右と同様のサイクルが繰り返される状態が続いた。このようにオイルを燃料とする場合は、火力が弱い関係から午前一〇時半頃から夜まで継続して釜焚きを行うことも多かった。また、本件建物の周辺は風が巻いていることが多く、一定方向に煙が流れることはなく、風が煙突から本件建物に向いて吹いている時間帯にのみ、本件建物に煙が及ぶ状態となるが、このような時間帯はさほど多くは見られなかった。

(八) 原告は、本件建物に入居してから、被告の担当者らが右の煙の排出について告げなかったことについて強く抗議し、右の煙を耐え難いものと感じ、被告に通告の上、同年八月九日、本件建物に入居する前に住んでいた借家である芝浦マンションに引っ越し、その後、本訴係属中の平成一一年一〇月末に月島温泉の営業が停止し煙突からの煙が排出されなくなったことから、占いによって日取りを選び平成一二年四月八日に再び本件建物に入居した。なお、セザール第二月島の分譲マンションを購入して入居した者のうち、原告の外に煙を避けるために他に転居した者はいなかった。

(九) 原告が本件建物に入居して以降、原告と被告の間では右の煙の問題の解決策が話し合われ続け、被告は被告の分譲している他のマンションを代替として提供することを申し出たが、原告がそれに加えて請求する損害賠償等をめぐり合意にいたらず、本訴の提起に至った。

2  右認定事実に照らすと、本件建物は、それ自体に瑕疵や欠陥があったわけではないが、本件建物の売買契約締結の時点で、本件建物の完成後も相当の期間にわたって近接した位置にある月島温泉の大煙突の排出口から本件建物における居住環境に少なからぬ影響を及ぼす煙が排出され続けることが予想されたものである。そして、本件建物の建設、分譲販売を企画した被告が、右売買契約の締結の頃に月島温泉の経営者もしくは敷地所有者らに照会すれば両者の間の紛争により月島温泉の営業停止の時期が遅延し、将来煙突からの煙の排出が停止する時期の見込みもたっていないことが比較的容易に判明する状況にあったものである。そうすると、分譲マンションの建設、販売を業とする被告が、右のような調査も行わず、その結果、漫然とこのようなおそれがないかのように判断し、その旨原告に説明して本件建物を販売したことは、売買契約上の付随義務である説明義務の不履行にあたるものであり、これにより原告が被った相当因果関係の範囲の損害について賠償責任を負うものというべきである。

原告は、右のような損害のほかに、本件建物に煙害が及ぶことによる瑕疵担保責任を理由として代金の減額請求をするが、既に月島温泉の営業は停止され、本件建物に煙の及ぶ状態は消滅している(なお、乙第六号証の1、2によれば、月島温泉の跡地に建設されるビルの屋上にも煙突が設置される予定であるが、本件建物とは水平距離で約七メートル、垂直距離で一〇メートル以上離れており、燃料も都市ガスを利用するため、本件建物に影響を及ぼすことはほとんどないことが認められる。)のであるから、もはや本件建物に煙害を理由とする瑕疵の存在しないことが明らかであり、原告の右請求は理由がない。

二  争点2(損害額)について

1  証拠(甲二三の1ないし5、二四の1ないし4、二七の1ないし3、二九の1ないし16、三二の1ないし27、三三の1ないし4、原告本人)によれば、原告は、本件建物に入居した後、本件建物に及ぶ煙を避けるため借家である芝浦マンションに引っ越し、その後、再び本件建物に入居したことによって、次の支出を要したことが認められる。

(一) 引越費用

<1> 本件建物~芝浦マンション(平成九年八月九日)

ヤマト運輸 二五万三六四〇円

タクシー代 四一四〇円

<2> 芝浦マンション~本件建物(平成一二年四月八日)

ヤマト運輸 二六万〇一〇〇円

(小計五一万七八八〇円)

(二) 家賃

芝浦マンション(株式会社柏栄、株式会社柏隆)

平成九年八月~平成一一年一二月分(二九か月分)

二二万〇二六六二円(振込手数料を含む)×二九か月=六三八万七五九八円

(三) 車庫代(株式会社エタニビル)

芝浦マンション付近

平成九年八月~平成一〇年三月分(八か月分)

五万二四一九円(八月分日割り)+六万五二六二円×七か月分=五〇万九二五三円

(四) エアコン代

芝浦マンションに戻ったことによるエアコン代 三一万二九五〇円

(五) 移転通知費用 一万一三〇〇円

2  前記認定のような煙が本件建物の住環境に及ぼす影響や、良好な住環境を求めて本件建物に入居した原告が右の煙の及ぶ生活を耐え難いものと感じて他に転居したことに相当の理由があることに照らすと、この転居に必要な限度の費用は被告の債務不履行と相当因果関係のある損害というべきである。そうすると、原告の右支出のうち、(一)の引越費用、(三)の車庫代、(五)の移転通知費用は、その全額が被告の債務不履行と相当因果関係のある損害と認めることができる。

しかし、(二)の家賃の支出額は、当時の原告の収入月額が四〇万円余であったこと、原告が一人暮らしであり、本件建物の広さも五八・六〇平方メートルであること、セザール第二月島の居住者のうち原告以外に煙を避けるために他に転居した者はなく、転居にさほどの緊急性があったとは認められないこと(原告本人尋問及び弁論の全趣旨による。)などに照らすと被告の右のような債務不履行から生じた事態を避けるために必要やむを得ない措置としての限度を超えるものであり、右各事実に照らすと、月額一五万円として二九か月分(被告が芝浦マンションに移転した平成九年八月から月島温泉の煙が出なくなって二か月が経過した平成一一年一二月末までの二九か月分)合計四三五万円が被告の債務不履行と相当因果関係のある損害と認められる。

(四)のエアコン代は、芝浦マンションに引っ越したことにより、もとのエアコンを移す以上に当然に新たなエアコンが必要になったものとは認められないから、被告の債務不履行による損害とは認められない。

3  原告は、右のほか本件建物に入居した間に煙のために気管支喘息になったと主張し、その治療費等二二万二六三六円を請求している。そして、原告は右主張に沿う供述をし、「本件建物に入居してから右喘息を発病したものと認める。」旨を記載した医師の診断書(甲二二の1)を提出している。しかし、前記認定のとおり、月島温泉の煙突からの煙は主として新しい材木の燃焼によるものであることやこれらの煙が本件建物に及ぶ時間帯も限られていたこと、原告が本件建物に止まったのは約一か月であり、その間も平日の昼間は勤務に出て本件建物にはいなかったこと、セザール第二月島の原告以外の入居者は長期にわたり同マンションに居住しているが、これらの者で煙によって気管支喘息を引き起こした者がいたとは証拠上認められないことなどの各事実に照らすと、原告の主観的な認識はともかくとして、煙によって気管支喘息が引き起こされたとの客観的な因果関係を認めることはできない。したがって、原告主張の喘息の治療費その他の支出は、被告の債務不履行と相当因果関係のある損害ということはできない。

4  また、慰謝料についても、右のとおり、本件建物に及ぶ煙のために原告の気管支喘息が引き起こされたとの客観的な因果関係は認められない上、被告の前記のような説明義務の違反が、被告の故意によるものではなく、月島温泉の経営者と敷地所有者の間の紛争により月島温泉の営業停止が大幅に遅延することを被告が把握することができなかったという事情によるもので、不法行為を構成するような強度の違法性を有するものではないこと、その他前記認定の事実関係に照らすと、被告の債務不履行による損害とは認められない。

5  弁護士費用についても、右のとおり、被告の説明義務の違反という付随義務の不履行は右のような事情によるもので、不法行為を構成するような強度の違法性を有するものではないこと、前記認定のような煙が本件建物に及ぼす影響をどの程度のものと理解し、被告の責任の範囲をどのように考えるかは人ごとに相当異なりうるところであって、被告の側で代替のマンションを提供する以外に損害賠償には応じられないとの態度をとったことも社会通念上不当とはいえないこと、また、本件訴えでは、原告は当初は本件建物の売買契約が被告の詐欺によってなされたと主張し、売買代金の返還と四五〇万円の損害賠償を求めており、被告が応訴してこれを争ったことにも相当の理由があったことなどに照らすと、被告の債務不履行による損害とは認められない。

三  以上によれば、原告の本訴請求は、右の(一)の引越費用五一万七八八〇円、(二)の家賃の支出額のうちの四三五万円、(三)の車庫代五〇万九二五三円、(五)の移転通知費用一万一三〇〇円の合計五三八万八四三三円の支払いを求める限度で理由があるが、その余は理由がない。よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 西村則夫)

別紙 物件目録

(一) (一棟の建物の表示)

所在 中央区月島三丁目四〇一番地一

建物の番号  セザール第二月島

(1)  構造 鉄筋コンクリート造陸屋根九階建

(2)  床面積 一階 二四三、五二平方メートル

二階 二四四、六四平方メートル

三階 〃

四階 〃

五階 〃

六階 〃

七階 〃

八階 二二二、三〇平方メートル

九階 一三八、一八平方メートル

(敷地権の目的たる土地の表示)

(1)  土地の符号 1

(2)  所在及び地番 中央区月島三丁目四〇一番一

(3)  地目 宅地

(4)  地積 四七九、三三平方メートル

(専有部分の建物の表示)

家屋番号 月島三丁目四〇一番一の九〇三

建物の番号  九〇三

(1)  種類 居宅

(2)  構造 鉄筋コンクリート造一階建

(3)  床面積 九階部分 五八、六〇平方メートル

(敷地権の表示)

(1)  土地の符号 1

(2)  敷地権の積類 所有権

(3)  敷地権の割合 一〇〇〇〇〇分の三四五三

(二) (一棟の建物の表示)

所在、建物の番号、構造、床面積及び敷地権の目的たる土地の表示は(一)と同じ。

(専有部分の建物の表示)

家屋番号 月島三丁目四〇一番一の一〇五

建物の番号  〇〇三

(1)  種類 車庫

(2)  構造 鉄筋コンクリート造一階建

(3)  床面積 一階部分 一一、七七平方メートル

(敷地権の表示)

(1)  土地の符号 1

(2)  敷地権の積類 所有権

(3)  敷地権の割合 一〇〇〇〇〇分の七一九

以上

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